『北腰曲輪』|村翁夜話集所収姫路城門櫓明細書|第一冊・村翁夜話集
「村翁夜話集」は播磨地方の郷土史で近世播磨の地域社会を知る上で欠かせない
基礎的な情報を提供してくれる書物であると言われます。
しかしながら平文で多くの櫓が書かれ、どの部分を示して書いているのかが、
パッと見で分かりにくいという問題があると共に、現在の呼名とは異なっている事が多くあります。
ここでは 『北腰曲輪』の部分を抜粋してご紹介します。
『北腰曲輪』|村翁夜話集所収姫路城門櫓明細書|第一冊・村翁夜話集
「北腰曲輪」に関しては「村翁夜話集(城内図書館本)」に記載はあるものの、
1つの建造物が記載から漏れているようです。
ちなみに「村翁夜話集」の底本については、以下のように書かれています。
一 底本
この資料集で用いた本書の底本は姫路市立城内図書館所蔵本(以下、城内図書館本と略称する)である。諸本については十分な調査が行えていないが、現在のところ、他に姫路市渡辺聡家所蔵本(以下、渡辺本と略称)、英賀神社所蔵本、射楯兵主神社所蔵本が知られている。しかし、いずれも抄録本や欠本であり、城内図書館が最善本とみることができる。
(引用抜粋)『村翁夜話集』解題 前田徹|第一冊・村翁夜話集|播磨の地誌 福本勇次著『村翁夜話集』刊行会-平成27年1月25日発行
この本が出版された時の「姫路市立城内図書館所蔵本」には、
実際、記載漏れが起きている場所があるようで、
その証拠に「姫路城史14巻資料編/一史料/2 近世の姫路城」には、
村翁夜話集の抜粋があり、以下のように注記の上記載されています。
同続東ノ方御多門 桁行七間、内ニ井戸アリ、梁行三間二尺四寸、
(この項脱漏につき異本により補う)
同続東ノ方塩蔵 桁行拾五間弐尺 梁行三間弐尺六寸同続ほノ御櫓 桁行五間半、梁行四間三尺五寸、
(引用抜粋)姫路城史14巻資料編/一史料/2 近世の姫路城
これによって、今回参考にした「村翁夜話集(城内図書館本)」以外を、
「姫路城史」作成の際には別途参照をして作成したことを示しています。
「姫路市渡辺聡家所蔵本」「英賀神社所蔵本」「射楯兵主神社所蔵本」のいずれかには、
上記の脱漏部分の記載があったという事なのでしょう。
この脱漏部を当てはめて、古地図に当てはめていくと、以下のように解釈できます。
「555:塩櫓」が未記載部分です。
「村翁夜話集」では以下のように書かれています。
管理 | 現存 | 現名称 | 重層 | 村翁夜話名 | 村翁夜話集原文 | エリア | 桁行 | 桁行(m:参考) | 梁行 | 梁行(m:参考) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
57 | 現存 | ほの門 | - | ほノ冠木御門 | にノ御門内東ノ方 〇ほノ冠木御門 桁行壱間弐尺、明キ四尺八寸、 | 北腰曲輪 | 一間二尺 | 2.4 | - | 0.0 | - |
58 | 現存 | イの渡櫓 | - | にノ御櫓 | 同所北ノ方にノ御櫓 桁行三間五尺、梁行四間弐尺八寸、 | 北腰曲輪 | 三間五尺 | 7.0 | 四間二尺八寸 | 8.1 | - |
59 | 現存 | ロの渡櫓 | - | 御多門 | 同続東ノ方御多門 桁行七間、内ニ井戸アリ、梁行三間二尺四寸、 | 北腰曲輪 | 七間 | 12.7 | 三間二尺四寸 | 6.2 | 内に井戸あり |
555 | 現存 | ハの渡櫓 | - | 塩蔵 | 同続東ノ方塩蔵 桁行拾五間弐尺 梁行三間弐尺六寸 | 北腰曲輪 | 十五間二尺 | 27.9 | 三間二尺六寸 | 6.2 | この項脱漏につき異本により補う(出典:姫路史14巻)、別名「塩櫓」 |
60 | 現存 | 二の渡櫓 | - | ほノ御櫓 | 同続ほノ御櫓 桁行五間半、梁行四間三尺五寸、 | 北腰曲輪 | 五間半 | 10.0 | 四間三尺五寸 | 8.3 | - |
61 | 現存 | ホの櫓 | - | 御多門 | 同続東ノ方御多門 桁行拾間、梁行四間半、 | 北腰曲輪 | 十間 | 18.2 | 四間半 | 8.2 | 「村:御多門(61)」の位置の櫓に当たるが櫓の割り付けが現在と異なる。 |
62 | 現存 | ヘの渡櫓 | - | 御多門 | 同続南ノ方同断 桁行五間半、梁行三間、 | 北腰曲輪 | 五間半 | 10.0 | 三間 | 5.5 | - |
63 | 現存 | への門 | - | へノ冠木御門 | 同所南ノ方へノ冠木御門 桁行壱間弐尺弐寸、袖ノ間一間一尺、 | 北腰曲輪 | 一間二尺二寸 | 2.5 | - | 0.0 | - |
64 | 現存 | イの渡櫓南方土塀,への門西方土塀,への門東方土塀 | - | 御塀 | 同所御塀拾五間一尺五寸 但ほノ御門北方并へノ御門東ノ方とも、 | 北腰曲輪 | 十五間一尺五寸 | 27.7 | - | 0.0 | - |
517 | 現存 | への門東方土塀 | - | 御塀より分割 | (御塀として記載) | 北腰曲輪 | - | 0.0 | - | 0.0 | 「村:御多門(64)」に他の塀と合わせて記載。 |
518 | 現存 | への門西方土塀 | - | 御塀より分割 | (御塀として記載) | 北腰曲輪 | - | 0.0 | - | 0.0 | 「村:御多門(64)」に他の塀と合わせて記載。 |
523 | 現存 | イの渡櫓南方土塀 | - | 御塀より分割 | (御塀として記載) | 北腰曲輪 | - | 0.0 | - | 0.0 | 「村:御多門(64)」に他の塀と合わせて記載。 |
※明キ:扉開口幅を示す。
※クヽリ:脇戸(潜戸・くぐりど)扉開口幅を示す。
※同断:同じこと
※廿間:二十間
※并:ひょう、へい、あわせる、ならぶ
※厩:うまや(廐)
本一覧は筆者の勉強・調査・後の検索を目的に作成したものであり、その正確性を保証するものではありません。
(出典・抜粋引用)第一冊 村翁夜話集所収「姫路城門櫓明細書」|播磨の地誌 福本勇次著『村翁夜話集』刊行会-平成27年1月25日発行
尚、上記一覧内の「桁行(m:参考)」「梁行(m:参考)」は一尺303mm換算として算出したものであり、イメージしやすくする為の参考値です。
また姫路城内では1間は六尺五寸とする説もあり、1間当たりの当時の寸法は明確ではありません。
昭和の大修理では実寸を元にした尺寸法を定めているようですが、その寸法が分かり次第、参考値を更新します。
現時点は参考値を表示しています。
「御塀」は村翁夜話集において長さ(間数)のみが表示され明確に壁の位置を示していません。
暫定的に対象と思われる壁を推測し割り当て、記載していいます。
「御壁」の現在呼称の壁に対する割り当ても、あくまでも参考とお考えください。
現在の姫路城で各櫓に付けられている名前は、その名称で「国重要文化財」の登録も既に行われています。
現在は重要文化財登録の名称で呼ぶのが、正しい呼び方になるものと思っています。
当サイト管理者は「旧名」で呼ぶことや過去の錯誤を無くすことがしたい訳ではありません。
過去文献の調査時に過去名が必要な場合がある為にご紹介をしているに過ぎません。
『北腰曲輪』原文抜粋
以下にこの部分の原文抜粋を記載しておきますので、
別途利用される際に、引用されると便利かもしれません。
「第一冊・村翁夜話集|播磨の地誌 福本勇次著『村翁夜話集』刊行会-平成27年1月25日発行」の記載は必須です。
※以下は「姫路市立城内図書館所蔵本」のみの記載としています。
可能であれば、このURLへの発リンクを頂けますとありがたく存じます。
にノ御門内東ノ方 〇ほノ冠木御門 桁行壱間弐尺、明キ四尺八寸、
同所北ノ方にノ御櫓 桁行三間五尺、梁行四間弐尺八寸、
同続東ノ方御多門 桁行七間、内ニ井戸アリ、梁行三間二尺四寸、同続南ノ方同断(御多門) 桁行五間半、梁行三間、
同所南ノ方へノ冠木御門 桁行壱間弐尺弐寸、袖ノ間一間一尺、
同所御塀拾五間一尺五寸 但ほノ御門北方并へノ御門東ノ方とも、へノ冠木御門外東方 とノ御門 桁行三間一尺五寸、梁行一間五尺、明キ一丈一寸、クヽリ明キ弐尺一寸、
同続南ノ方御多門 桁行三間弐尺、梁行三間一尺、
同所外東ノ方とノニ冠木御門 桁行二間半、袖間五尺、明キ七尺、クヽリ二尺九寸、
同 と三同断(冠木御門) 桁行弐間、明キ六尺、
同北方塩焇(マヽ)蔵 桁行二間六尺、梁行一間三尺五寸、但入口二枚扉、四方屋根地形トモ切石、
同所東ノ方と四冠木御門 桁行二間弐尺二寸、袖間一間、明八尺四寸、クヽリ明三尺一寸、
同所御塀百二拾四間 とノ一御門外ヨリとノニ御門東長壁、但表通とノ三御門左右とも、(引用抜粋)第一冊・村翁夜話集|播磨の地誌 福本勇次著『村翁夜話集』刊行会-平成27年1月25日発行
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公開日:
最終更新日:2018/02/18