「重要文化財 x アート展示」は楽じゃないんだぜ?(たぶん)施工にみる努力の結晶!
現在、姫路城で開催されている「姫路城 x 彩時記(2017)」は、
重要文化財である「姫路城・西の丸・百間廊下」内部の夜間公開とアート展示のイベントです。
アートの展示一つとっても、重要文化財が相手という制約の中、
細やかな気遣いが行われている施工が見て取れます。
概要(見出し)
直近の展示運営の状況(実績)
施工云々の前にまず「姫路城 x 彩時記2017」の運営状況について、
現地の状況からご紹介しておきます。
彩時記は狭い長廊下である百間廊下内の各部屋・空間を利用してアート展示を行うイベントです。
暗い廊下に浮かび上がる光のアートはとても綺麗です。
その日によって、部屋内に入れたり入れなかったり
途中、小部屋の中で映像投影をしているアートなどがあり、
初日(10日)は部屋に入って観ることができましたが、
13日には入口に柵が設けられ、中に入らず入口で見るようになっていたりします。
しかし、14日は中にまた入る事ができたりと現場の運営状況は臨機応変に変化しています。
行った日が中に入れれば満喫ですが入れなかった場合はちょっと残念。
運しだいといった部分がありますので一応心に留めておく必要があるかもしれません。
例えばですが、映像投影の作品は、その時によってまちまちの対応がされています。
⑮泰平
書道の映像投影アートの上映が行われており、
映像は次々に移り変わっていく為、できれば1本を最後までじっくり見たいものです。
しかし、場合によっては部屋の外から列の先頭で見る必要が出ることがあります。
結構、ドアの間口が狭く、外からではちゃんと見ることが難しかったりもします。
⑫千姫の涙
一体、どのように作っているのか分からない幻想的なレースのスクリーンに、
幻想的なアート映像を投影する作品です。
これも実際にはゆっくりと最後まで観たいのですが、
場合によっては中に入る事ができない場合もあります。
外からではこの立体感と形が分かりにくいのでじっくり部屋の中で見たいものです。
この限りではありませんが、小部屋展示は混雑状況に応じて、
部屋内に入れない場合もありますので、混雑時を避けて観覧されると満喫しやすくなります。
週末と平日では混雑に倍の違いも
ちょっと立ち話程度に耳にした実績速報値ではありますが、
11/14(火)の平日の彩時記終了間際の
チケット販売数(百間廊下に入った人数)は「500枚ちょっと」との事でした。
ちなみに週末の土日では「1000枚を超えた」との話でしたので、
平日と週末では、2倍の混雑が発生していた事が推定できます。
11/14(火)にチケット購入をした半券の通し番号は、
良くも悪くも連番の「4444」でしたw
初日(10日)半券が「307」で、11/13(月)は「3608/3609」でしたから、
おそらく、初日からの通し番号なのでしょう。
11/10~11/14までの4日間で、およそ5000人弱が、
百間廊下に入場したという実績になっています。
1000(10日)+1000(11日)+1000(12日)+500(13日)+500(14日)=約4000枚
その他、全日端数合計が500枚と言った感じでしょうか。
ぜひとも、オフピーク観覧にお役立てください。
文化財に傷はご法度、ネジ・釘が使えない展示の制約(彩時記)
さて、百間廊下の内部には様々なアート展示がされています。
アート展示といっても置いて終わりではなく、吊り下げたり様々な趣向が凝らされています。
ミラーボールの光を反射して幻想的な世界を作り出すアートなどは、
実に重量が重たくなりそうな作品です。
こうした作品でも文化財に傷をつけることなく、現状復旧が求められます。
暗くピントが合わなかったので見えにくいのですが、
重量を支えるための仮設の構造材を渡して、直接文化財の一点に荷重が掛からない工夫がされています。
例え、軽そうな作品であっても、そうした配慮は常にされています。
「白鷺」という作品は羽を組み合わせた光と影が美しい作品です。
その上部を見てみると、
おそらくナイロンワイヤー(?)のように見えますが、さらにぐるっと梁を養生しているのが見えます。
本当に難しいなと。
これ、文化財をいたわるあまり、優しい素材(柔らかい)を使って強度を下げてしまって、
万が一にも、展示中に落下して床板などを傷つけてもダメなわけです。
だからと言って、スチールワイヤーなどでガチガチにして、
締め付けの跡などが残ってしまってもまずい。
アーティストさんは作品を考えるよりも、
どうやって運搬・搬入・設置するかを、練ってる方が大変なのではないかとさえ思います。
ただこんなことも。
先日10日にみた際には左のようにサーキュレーターの風で、
くるくると回るアートが展示されていました。(左)
しかし、14日にみた時にはどうやら回り過ぎて、吊っていたものが切れてしまっていました。
本当に難しいのだろうなと、ご苦労お察しします。
※決して揶揄する意味はありません。
逆に、切れてもサーキュレーターの上で回り続けてるこのバランスは、
作品として逆にすごいのではないかとさえちょっと思っています。
(直しに来られるんでしょうかね、納品作品が破損となるとやっぱり契約上は・・・大変ですね)
ただ、これ。
運営としては作者がくる前に、
即時にサーキュレーターを停止してこの作品の展示のみを中断した方がいいと思います。
サーキュレーターに作品の紐が入り、巻き込みモーターに負荷がかかる可能性があると思います。
焼けるようなことはないんでしょうけど、回転体上部に紐が触れてるだけで私は怖いです。
※尚、この記事のこの部分は公開状態のままではちょっと・・・というお声を頂ければすぐに削除します。(Twitterででも)
他にも渡り廊下にレースのカーテンをつり下げて映像投影を行っている作品があり、
このレースカーテン一つとっても、ナイロンワイヤーで優しく巻いて固定しています。
以下の固定方法を見て、あれ?養生はいらないの?と思われるかもしれません。
大丈夫!
この渡櫓内は「重要文化財ではありませんっ」
西の丸百間廊下は昔、崩落した歴史があります。
入口から北上して、レの渡櫓からヲの櫓までの間の真新しい空間は実は文化財ではないのです。
(復元するための資料が不足しているようで、復元には至っていないとのことです)
写真映えはするんですけどね^^;
それでも、現状復旧の原則が守られているという厳しさが見て取れます。
電気配線の苦労もあちらこちらに
普段、西の丸百間廊下には照明はありません。
行燈くらいはあったかもしれませんが、
それは常設用の設備でその設備から電力を取ると配線の電力容量はまず足りなくなるでしょう。
展示では何台も電気食いのプロジェクターが持ち込まれていますし、
このイベントのために非常に多くの仮設配線が付設されています。
どこから引き込んできた配線かまでは追いかけていませんが、
上下の階段も取り回しにやりくり苦労が見て取れます。
こうやって配線すると総延長が長くなって、コストが掛かるだろうなぁと思ったり。
サクッと壁の中を通して、床貫通!は無理ですからね。
中古配線の使い回しなら、材料費はレンタルで済むんでしょうけど、
中古を使って、万が一にも中で断線とかしていたらと懸念し(VVFではないだろうケド)
新品かもしれません。
そうした配線の結線部もお馴染みの(お馴染みでない?)
ウォルボックス(未来工業)でしっかりと保護されています。
が、床置き。
だって固定する場所ないもんね。ねじ止めできないし・・・。
テープで貼ってある「0.5k」って「500m」カナ?
百間廊下の長さを考えれば、電圧降下も考えなきゃなレベルかもなぁ、確かに。
いくらLED全盛の時代になったとはいえ、
これだけのLEDの個数を点灯するともなれば、それ用にケーブル敷設は必要になるでしょうし、
当然、外のどこかで幹線保護のブレーカーや、配電盤で各系統の保護もしているでしょう。
こうしたイルミネーションも養生テープで軽く止めるだけ、しっかり現状復旧(賃貸か?)
配線設計ひとつとっても大変な苦労があっただろうなと思うのです。
これが屋外ならまだ(いくらかは)気楽な部分はあると思いますが。
事故や火災は絶対起こしてはならない
さっきのウォルボックスの中は圧着端子を端子台で接続しているのか、
それともワンタッチコネクターを利用しているのかはわかりません。
普通に電工さんが施工していれば、圧着端子でもコネクタでもまず間違いはないでしょう。
でも、ちゃんと施工しないと、火事になる可能性があるのが電気の世界。
重要文化財でこんな事態は絶対に避けなければならない。
(普通に施工して容量超過しなければ、まずこうはならないのだけれども・・・)
だけども、アートが決まる前に必要電力量なんて決まらない・・・
そうなんですよね。
デザイナーさんがアート展示を行うに当たって、
どのようなイマジネーションが降臨するのかは分からない。
プロジェクターは1個なり2個なりおおよそ検討はつくだろうけど、
照明の個数を何個にすれば、美しく輝いてくれるのか?
実際は現場で設置してみないと掴めない部分は多くあるはずなのです。
そして、結果として「xx VA」の容量が必要になりましたと。
デザイナーさんと設備屋さんの擦ったもんだが、なんとなく透けて見えます。
縁の下の努力にも感謝
なんとなく、ふーん、へーと見て回るアートですが、
裏ではしっかりとした計画や現状復旧の努力が縁の下で支えてくれている事に感謝です。
展示を見回っていると、ちらほら聞えてくる言葉に・・・
展示の見せ方がなぁ・・・
もっとこうすれば綺麗なんじゃないの・・・
設置場所を変えた方が作品が引き立ちそうなのに・・・・
(観覧者がふと口にしていた、ぼやきより)
うんうん、と自分も頷くこともあれば、
それやると、もっと電気食うんじゃない?配線太くする必要あるんじゃない?など、
頭を過る擁護意見。
現場はさぞ大変だった部分は多くあったと思うんです。
しかし、見た所 VVF 2-1.6c(電線の種類と太さ) が多いように見えたのは、
あまり太いケーブルを使って大きな電流を1本で屋内に引き込むのではなく、
出来る限り小さい容量で、複数系統に細かくわけて配電することでリスクを減らしているんですかね。
大容量の引込は外だけにしておいて。(推測)
これだけのイベントを安全に半月もやろうと思えば、
1名500円くらいは協力してもらわないと、やっぱり厳しいよなと思ったりもします。
アートだけでなく設備仮設にも結構コストかかっていますよね。
自宅のリフォームで「2か所コンセントを付けて」と依頼したら、
あっさりと2万円の請求が上がってきていました。
既存配線から分岐して(おそらく新しくは敷設しないだろう)壁に落とすだけなんですが。
そう考えれば、この工事にいくらがかかっているか。
・・・大きな額が請求されているでしょうね。
三の丸も24時間警備<夜間警備>も投入(ファンタジーイルミネーション)
百間廊下の涙ぐましい努力だけでなく、
姫路城ファンタジーイルミネーションだって、人の居ない時間にも頑張っています。
それは、夜間警備。
イルミネーションが消えてから「三の丸大路」は閉鎖されイベントが終了になります。
その閉鎖エリア内に人が立ち入ったりして、
ライトアップの照明を壊したりしてしまわないようにイベント終了後には、
警備の方が巡回するようになっていました。
寒いこの冬の季節に、一晩中暗い三の丸広場を警備するのかと思うと、
頭の下がる思いです。。。
一晩に何度、トイレに行くんだろうなと思ったり。。。
そんな夜間警備も10日~26日まで続けられるのですから、
3万円/日 x 15日 = 45万円(単純計算)
そして、ファンタジーイルミネーションは無料イベントになりますので、
姫路市の負担で行われています。
市にお金を落としてくれれば、税収が上がって恩の字ではあるでしょうけども。
わー綺麗!と、楽しい時間は、本当に多くの人の努力で実現しているのが感じられます。
当然、イルミネーションの費用の方が高額なのは当然でしょうけど。
これはさっぱり見当も付きません。500万くらい?
毎年行われているイベントが大変な努力の上で実現し、
大きな事故なく毎年終えられていることに感謝しつつ、今年も楽しませて頂きたいと思っています。
余談ですが、イベントのロゴ。
格好いいね。
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