姫路城東側の通路下工事が終わった土手に毛が生えたよ!(どうでもいいか)
長い間姫路城の東側通路、喜斎門跡や美術館方向へ抜けるルートが通行規制になっていました。
石積みの崩壊が原因で復旧工事が進められてきました。
2017年3月にはその工事が無事完了し、通行規制が解除されると共に、
石垣の法面がシートで覆われる処置が完了しています。
この新たに施工されたシートは一見すると「これで終わり?」と思われるような仕上げです。
しかし、このシートは時間が経ってやっと完成する「経年変化」が必要なものなのです。
概要(見出し)
シートに緑の帯が発生し、至る所から若葉が芽吹く
2017/04/24春の桜も葉桜になり、遅咲きの桜が満開を迎えた頃の
姫路城東側通路部分です。
簡易的な柵が設置され工事が一旦は終了していることがわかります。
なお、この工事は以下でお知らせしてきた通行規制に伴う工事です。
2017/03/29頃の土手法面にシートが施工された直後の頃に動物園側から見た状態です。
綺麗に法面全体がシートで覆われています。
※法面(のりめん):切土や盛土により作られる人工的な斜面のこと。
また斜面の右下の角部分には黒色のパイプが見え、
排水管のような雨水処理を考慮した設備が見えています。
※排水管は石垣の影になっていますが、左側の角にもあり計2箇所設置されています。
こちらが4/24時点の法面の状態です。
斜面の途中に少しずつ緑色の帯が見えてきています。
拡大してみると部分部分に草の若芽が出ていているのがわかります。
水が溜まりやすい突起部に沿って芽が多く出ています。
ちょびちょびと小さな新しい命が顔を覗かせています。
こうして法面が植生で覆われて、
少しずつ斜面の保護の役割を果たし、崩落しないような安定性を徐々に構成していきます。
土手面に植生があるのは山崩れに有効だと言うけど、ここは石垣じゃなくていいの?
そうですね。堀の周囲ですので、ここは「石垣」と思われるかもしれません。
では少し時間を遡って見てみましょう。
2016/04/02頃の土手を動物園側から見ています。
当時は気にすることもありませんでしたが、土手の一部がシートで覆われて、
土嚢(どのう)でシートを押えているのが見えます。(下側の方)
この頃は応急処置はしているものの、通行規制はかけられていないのが歩行者の存在でわかります。
姫路城東側の石垣の崩落は2015年末頃に発生
この応急処置が行われている部分の土手の斜面は、
以下のニュースに起因してのものであることがわかります。
当時、私はこうしたニュースに触れることもなく知りませんでした。
正直に言えば、通行止めになってから知ったように思います^^;
石垣の崩落に関してのニュースは以下のように報じられています。
毎日新聞
姫路市は28日、世界遺産・国宝の姫路城で二の丸の東側にある通路下の石積みが一部崩れたと発表した。姫路城管理事務所によると、一帯は特別史跡姫路城跡だが、石積みは1957年度に道路の拡幅工事で施されたものとみられ、歴史的価値はないという。
現場は、三の丸広場から城の東側に位置する市立美術館方面に抜ける通路の下。22日午後2時ごろ、城周辺で清掃活動中の自衛隊員が石の落下を目撃し、同事務所に連絡。確認したところ、通路下でのり面を保護する石積みが縦90センチ、横80センチの範囲で崩れていた。数メートル下の堀に最大40センチほどの石が数個落ちたとみられる。
(以下略)(抜粋引用)姫路城:石積み一部崩壊 浸食や車両通行影響か /兵庫 – 毎日新聞(月間5本まで)
(Evernote)https://www.evernote.com/shard/s380/sh/7820fb18-4faa-4603-823e-ed045e5d2e00/3b37940bc963ae13b7b66c2e90d02409
2015/12/29のニュースですので年末の慌ただしい時期に崩落が起きたのですね。
姫路城的には閑散期(正月3が日を除く)で、まだ良かった部分もあったかもしれません。
何はともあれ自衛隊員の方も一般人も誰も怪我せず良かったなと思います。
崩落した部分は手すりが見えていることから斜面の右上の部分であることがわかります。
応急処置がされている部分が崩落したのだとわかります。
この崩落事件が起きる前の斜面の状態
石垣と斜面の崩落が起きる前の状態をみてみます。
2015/04/16頃の土手を動物園側から見ています。
右上の部分(崩落した部分)にすこーーしだけ、石垣が積まれている部分がありますが、
それ以外は石積みもなく、前面が植生で覆われたいわゆる土手の状態になっていることがわかります。
毎日新聞でも報じられている通り、この少しだけ見えている石垣は歴史的価値はないとのことです。
毎日新聞
姫路城管理事務所によると、一帯は特別史跡姫路城跡だが、石積みは1957年度に道路の拡幅工事で施されたものとみられ、歴史的価値はないという。
(抜粋引用)姫路城:石積み一部崩壊 浸食や車両通行影響か /兵庫 – 毎日新聞(月間5本まで)
(Evernote)https://www.evernote.com/shard/s380/sh/7820fb18-4faa-4603-823e-ed045e5d2e00/3b37940bc963ae13b7b66c2e90d02409
立ち枯れした木が数本立っている以外は、植生で覆われた土手面だったことから、
現状復旧と安全性確保という面から見ても、
今回の工事が大きく現状とかけ離れていないことが分かることと思います。
石垣にする場合は再現工事ということに
逆にここを「石垣」にすると元あった状態ではなくなってしまいます。
もし、ここを石垣にする場合は「再現工事」を行うようなことになり、
「過去にここが石垣で覆われていてどのような石垣だったのか?」
という歴史的根拠が必要になってしまいます。
そういう意味では、今回の工事では現状復旧に留めたということなのでしょう。
今回のシート工事がすべて植生で覆われるようになれば、
元あった状態に結構近くなることが容易に想像できます。
今回の工事では「素掘りの竪堀」の跡が発見されました
姫路城の世界遺産区域内で何らかの工事をする場合には、
最初に「発掘調査」から行うことが義務付けられています。
夏頃(7月)頃から10月までが発掘調査、
それから工事して3月末には工事完了ですので「3ヶ月/10ヶ月」と
半分近くが発掘調査に当てられています。
2016/7/6 21:20神戸新聞NEXT
昨年12月、通路の擁壁部分の石積みが一部(縦約90センチ、横約80センチ)崩落。雨水の浸食や車の振動が原因とみられ、市姫路城管理事務所は乗用車などの進入を制限した。
通路は特別史跡内にあるため、文化財保護法に基づき、復旧には遺構の発掘調査を行う必要がある。市は通路を約100メートルにわたり通行止めにし、10月まで調査を実施。来年3月までに復旧を終える方針という。
(抜粋引用)神戸新聞NEXT|姫路|姫路城の東側通路通行止め 12日から発掘調査(Evernote)https://www.evernote.com/shard/s380/sh/d95705e7-0654-4555-8c82-353449302896/e0ed5fb9166e554169979c5335599a11
こうした発掘調査によって、今回は「素掘りの竪(たて)堀とみられる溝」が発見されています。
毎日新聞
姫路市立城郭研究室は24日、同市の世界遺産・姫路城上山里曲輪東側の斜面に、素掘りの竪(たて)堀とみられる溝を発見したと発表した。竪堀は中世の山城などで多く用いられ、斜面を敵兵が移動しにくいように掘り下げたもの。石垣が多用されるようになった近世の城で確認されたのは彦根城など前例が少なく、大天守が築城された17世紀初頭に掘られたとみられる。
(中略)現場は二の丸の一部である上山里曲輪の石垣の外部。昭和初期に作った通路の石積みが崩れたため、市は昨年6月からの修復工事に伴い、地下の遺構や石垣の調査を開始。溝は斜面で見つかった。
江戸時代後期の絵図によると、現在通路がある付近には、城郭石垣から内堀へつながる斜面に、上下方向へ土塀が築かれていた。見つかった溝は土塀と平行して長さ約25メートルあったとみられ、幅3・2メートル、深さ1・5メートル掘り下げられた跡があった。
(以下略)(出典・抜粋引用)姫路城:斜面に溝、防御の竪堀か 近世では珍しく 28日に説明会 /兵庫 – 毎日新聞(月間5本まで)
(Evernote)https://www.evernote.com/shard/s380/sh/945c389e-957a-42e2-87a9-37f0273d14c2/d1dd62d1a90ed217d82441a6e4619b4a
こうした発見から将来に姫路城周辺全域の再現工事を行うようになった時の、
貴重な資料の一つになっていくのでしょうね。
現状復旧というけど、プラスチック製のネットなんて使っていいの?
気にする人は気にするかもしれませんね。
昨今は海洋プラスチック汚染も問題になったり、
自然界に樹脂やプラスチックを使うのはいいことではないでしょう。
姫路城東側斜面に施工したネットは「特注品・生分解性」
この斜面に施工されたネットは実は「生分解性」なのです。
商品としては「ダブルロンケットアナコンダ (I-40) 」なのですが、
この「ダブルロンケットアナコンダ (I-40) 」商品自体には、生分解性はありません。
ただ、同社からは「生分解性ダブルロンケットアナコンダ I-40」という商品も販売されています。
姫路城ではこちらが採用されているようです。(目視確認済)
【自然分解】
全ての材料に生分解性の素材を使用しております。
その為、このネットは自然に分解して最終的にはなくなってしまうものなのです。
ロンタイ様のお話によりますと、
概ね3年~5年で生分解され、ネットが見えない状態になってくるとのことで、
植生の付きが良いところでは1年レベルで分解されることもあるそうです。(電話ヒアリングによる概略)緑化面積国内No.1のロンタイ
ちなみにネットを固定するL型の釘で施工をするのですが、
通常(ロンタイ製)は釘はシルバー色が一般的で鉄製(鉄は錆びて土に還る)との事でした。
姫路城では「オレンジ色のL型のピン」 が施工されているようですので、
鉄というよりも、こちらも生分解プラスチック系なのかなと思われます。(推測)
※KBK製 ケー・ビー・アンカー(KBハイアンカーピン)でした。※詳しい方教えてください。
しかし「何故こんな中の人しか知らないような情報をこいつは知ってるんだ?」
と思われるかもしれません。
何ら内部リークなどはありません。
単に足で取材、取材・・・それだけですので(関係者の方)ご安心ください。
ね、工事現場にちゃんと商品が積まれて置いてあったから分かった。
それだけなんです。
ちなみに、市への電話取材によると、
このダブルロンケットアナコンダに含まれる種子は製品として一般的なものを使用とのことでした。
ロンタイの一般的な種子配合は以下のページで公開されています。
種子の配合について
ご要望に応じて最適な種子配合をご提案いたします
日本は多種多様な気候に恵まれており、地域によって自生する植物もそれぞれ異なっています。
各地域ごとに適した植物の種子を植生シートに配合することで、法面の緑化を促進し、環境保護にも役立ちます。もちろん、設計時や施工時においては弊社が要件に基づき最適な種子配合をご提案させて頂きますが、参考に弊社の植生シートごとにそれぞれ対応している種子配合用(PDF)をご覧いただければイメージを掴んで頂けると思います。
PDFによれば、以下のような種類が配合されているようです。
ダブルロンケットアナコンダI-40 | 植物名 | 普通 | 短草 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
冬草系 | 長草 | トールフェスク | ○ | – | オニウシノケグサ – Wikipedia |
ペレニアルライグラス | ○ | – | ホソムギ – Wikipedia | ||
短草 | クリーピングレッドフェスク | ○ | ○ | 芝・緑化・緑肥 | 品種検索 | クリーピングレッドフェスク | ナビゲーター – タキイ種苗 | |
レッドトップ | ○ | ○ | レッドトップ|その他 寒地型草種|寒地型芝草種子|環境緑化分野|商品情報|雪印種苗株式会社 | ||
ハイランドベントグラス | ○ | ○ | ハイランド|ベントグラス|寒地型芝草種子|環境緑化分野|商品情報|雪印種苗株式会社 | ||
ケンタッキーブルーグラス | – | ○ | 芝生用草種の特徴|環境緑化分野|商品情報|雪印種苗株式会社 | ||
ホワイトクローバー | ○ | – | シロツメクサ – Wikipedia | ||
夏草系 | 長草 | バヒアグラス | ○ | – | スズメノヒエ属 – Wikipedia |
短草 | バーミューダグラス | ○ | ○ | ギョウギシバ – Wikipedia | |
在来草 | よもぎ | ○ | – | ヨモギ – Wikipedia | |
めどはぎ | ○ | – | メドハギ – Wikipedia | ||
木本類 | やまはぎ | ○ | – | ハギ – Wikipedia | |
こまつなぎ | ○ | – | コマツナギ – Wikipedia |
概ね、芝系とススキのようにサラサラと風になびくような高さのある草が配合されているようです。
今後、こうした草が多く生えて、
ネットを覆い隠して、グリーンの土手面が再生されてくるはずです。
この土手は「草が生い茂って、ネットが生分解されてから工事完了」になるのです^^
そして姫路市が認めた「ダブルロンケットアナコンダ」
法面の保護効果は今後の集中豪雨などで発揮されてくることでしょう^^
あなたのご自宅にも施工されてはいかがでしょう?(笑)
ちなみにこんな誰も興味を持たないであろうことの記事に、
6時間近く時間をかけてしまった・・・。
もっと読んでもらえることに力を割くべきだなとちょっと反省です。
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