鬼瓦(おにがわら)
「鬼瓦」と聞いて何をイメージするでしょうか。
やはり怖い表情でこちらを睨みるける鬼の姿なのではないかと思います。
しかし建築用語的には「鬼瓦」=「鬼面」であるという意味合いはなく、
棟(屋根の頂線)の両端部の雨水侵入を防ぐ瓦として取り付けられるものを言います。
姫路城では「鬼面」の鬼瓦はなく縁起を担いだ模様や城主の家紋などが採用されています。
以下「姫路城以外の鬼瓦」に興味の無い方には無用なため、
姫路城の鬼瓦まで読み飛ばすには「このリンク」をクリックしてください。
概要(見出し)
「鬼瓦」のイメージ通りの鬼面鬼瓦
「鬼瓦」=「鬼面」というイメージに沿った基本デザインの
「鬼瓦」を以前撮影していましたので、ご紹介します。
当然、姫路市内の寺社などでいくらでも鬼瓦は見られると思いますのであくまでも参考です。
男山八幡宮の鬼瓦
男山八幡宮は姫路城の北西に位置する小高い男山の中腹に位置する神社です。
その社の屋根には立派な鬼瓦が載っています。
※鬼瓦ならどこの寺でも見られることと思いますが、あくまでも参考です。
いかにも「鬼瓦」の名前の通りの鬼面がすごい形相で睨んでいます。
廣峯神社の表門(随神門)の鬼瓦
「廣峯神社」は姫路城から見て北の方、増位山にある神社です。
境内入口の表門(随神門)は市指定文化財に登録されています。
※「本殿」「拝殿」は国指定重要文化財。
随神門の屋根にも鬼瓦らしい鬼瓦が載っています。いかがでしょうか。
横から見ています。立体感が存在感を引き立て、鬼面に陰影を作り出しています。
「鬼瓦」≠「鬼面」ではないのですが、元々は鬼面が多かったのだろうという事はなんとなく感じます。
「鬼瓦」のデザインは多種多様で鬼面に関わらず様々なものがモチーフになっています。
上記の随神門でも、降棟の端部には家紋があしらわれた鬼瓦が配置されています。
織田家の家紋「五瓜・五瓜に唐花」が鬼瓦と鳥衾にあしらわれています。
このように「鬼瓦」といいつつも、家紋などがデザインに採用されていることがわかります。
あくまでも「鬼瓦」というのは、棟の端面の雨仕舞(雨水侵入防止処理)の為の役物という意味になります。
「鬼瓦」に様々なデザインを取り入れた例
「鬼瓦」に鬼面以外がデザインされている例として、
「すげーな」とつい声が出てしまいそうな鬼瓦が「亀山本徳寺」にあります。
「本堂」の鬼瓦なのですが、見事だなぁと感じる存在感です。
(公式)亀山御坊本徳寺
まず、本堂の前に「築地塀」から。
亀山本徳寺の鬼瓦
亀山本徳寺には「五条の築地塀」がかつてありました。
現在は近代の工法によって修繕されていますが、その存在感は見事なものです。
私は地味にこの「築地塀(姫路城的に言えば「油壁」)」を見に行ったのですが、
塀の上に載っている鬼瓦も精巧に作られた綺麗なものでした。
なお、この築地塀の修繕と経緯については、公式ページでPDFによって説明されています。
五条築地-中世に出現した一大民間勢力としての仏法領-(抜粋)
この度の築地再建では残念ながら、伝統的な練り土による築地の再現は果たされなかった。このことは建築史学的には耐えられない愚行かもしれない。しかし、練り土塀の再建は工事費の上から、今回の復興事業では到底望むべきものではないと判断せざるを得なかった。伝統的土塀の耐久性は、万里の長城を見るまでもなく、今回再建に使われた近代工法に比べて優れていると思われるが、そのメンテナンスのしやすさを考えた場合、今回の選択は適切だと考えている。
今回の築地塀の建設に当たっては、(中略・・・)
屋根瓦の紋は、旧築地では瓦の修理が継続的に行われた為、多様な紋瓦が使われていたが、初頭の五七桐紋が大半を占めていたため、一番古い樣式を参考に型を取り新たに作製した。平瓦の飾紋は桐紋と対である唐草文様を復元した。
五七桐紋と五条筋は、上述のように歴史的な由緒があるため、その複製には慎重を期した。
五条築地塀の鬼瓦(非文化財)
「五条」とは壁に入った横5本線を示しますが、
これは皇室との関係性を表し5本が最高位であるとされています。
※最近はなんとなく5条にしてしまっている塀もあるようですが。
「亀山本徳寺」も元々は築地(版築工法)で建てられた五条の築地塀があったことから、
格式の高い寺であったとは推測されます。
築地塀の屋根に鬼瓦が載っています。
修復からまだ間もないのか非常に状態が綺麗な鬼瓦で「右三つ藤巴」があしらわれています。
立体造形になっている為、厳密に家紋としての正確性は重視されていないようです。
家紋なども立体造形を取り入れた場合は「鬼師(鬼瓦職人)」の
創意工夫などが取り入れられるケースが多いようです。
大玄関<市指定文化財>の鬼瓦例
この「右三つ藤巴」の鬼瓦は重要文化財の「大玄関」上にも載せられています。
こちらは横に「猪目」がデザインされ一層美しさが増しているように感じます。
本堂(仮御堂)<県指定文化財>の鬼瓦例
そしてご紹介したかったのかこの「本堂」の鬼瓦です。
圧巻の規模で目の前に立つ「本堂」は、姫路の中心から近い場所にこんな建築があったのかと驚きました。
「本堂」には大棟の鬼瓦と入母屋の隅棟に鬼瓦が載っています。
大棟の鬼瓦です。なんとも威厳を感じさせるデザインをしています。
これも「鬼瓦」ですので、一言で鬼瓦と言ってもデザインもサイズも様々であると言う事が分かります。
このタイプの鬼瓦は「経の巻(きょうのまき)」とも呼ばれるもので、
神社や御所の屋根、又、門跡寺院等に主に使用されている屋根の棟端を飾る瓦なのだそうです。
※厳密には上部の円筒3本を「経の巻」と呼ぶようですが、鬼瓦全体としても呼ばれるようです。
隅の鬼瓦でさえ、この貫禄です。
こちらも「経の巻」が上部についていますので同じく「経の巻」でしょう。
「経の巻」の「台線」に現れた輪郭は「宝珠」か?
ちなみに、この鬼瓦にデザインされている台線(中の輪郭線)のモチーフ(饅頭型)は何だと思いますか?
私は「宝珠(如意宝珠)」だと思っています。(定かではありませんが)
「宝珠」は先ほどの「大玄関」屋根の上に見ることができます。
このように「宝珠」が載せられています。
「宝珠」が鬼瓦になった場合の例としては以下の様なデザインがあります。
立体が、そのまま鬼瓦にあしらわれて・・・
(出典)鬼瓦・飾り瓦電子資料室
平面のシンボリックなデザインに簡素化され・・・
(出典)宝珠 : 鬼瓦・飾り瓦電子資料室
これが「経の巻」に「台線(輪郭線)」としてあしらわれて、ラインアートへと・・・
もう「宝珠」にしか見えなくなってきませんか?「本堂」には大棟も、隅棟も。
では、これも宝珠ってことでいいですかね?
(この為だけにここまで引っ張って書いてきました)
何でこんなにしつこいのか?って思うかもしれません。
それは、これが宝珠であってくれないと、以下が無駄になってしまうからです(笑)
見ての通り、屋根漆喰をみれば「姫路城」の鬼瓦だと分かる事と思います。
姫路城の鬼瓦にも「宝珠」があるんですよ、、、たぶん。
この為だけに色々と見に行ったりと、地味に面倒なのがサイト運営だったりします^^;
ちなみにこの「経の巻」に「台線(輪郭線)」の模様に似たもので、
「猪目」をあしらったと解釈する場合もあるようです。
以下で猪の目と解釈しているように、中央が接したハート形がやはり猪目としての特色かと思います。
今気づきましたが、最初の男山八幡宮の鬼瓦の「鬼面の頭に宝珠」が載ってる。
地味に撮影いかなくてもよかった感も。。。
このように多種多様なデザインのある鬼瓦ですが、
その多様性は、姫路城の鬼瓦でもみることができます。
姫路城の鬼瓦
姫路城内で見られる鬼瓦に「鬼面」のものは見られませんが、
様々なものをモチーフにした鬼瓦を見ることができます。
鬼瓦についての参考先
以下サイトの「鬼瓦」の記述が詳しいです。
鬼瓦(オニガワラ)
棟の両端部。または片端に設けられる納まりと、装飾的な意味を持つ役物。鬼は鬼板とも呼ばれるが、瓦葺の場合は鬼瓦と称する。元来鬼は神と同様であり、屋根に付けた鬼は建物や家庭を守るという守護神の象徴であった。なお我国で、初めて鬼が出現したのは飛鳥時代の西暦640年頃といわれている。 やがて時代とともに変化し、今では須浜(スハマ)という形式的なデザインのものとなっている。
当初は鬼面ではなく鴟尾(シビ)などのようなもので、鎌倉時代から鬼面が現われた。
過去にあっては、鬼は雌雄の区別があり、陰陽学に従って取り付ける方向を決めた。古い本格的な社寺建築の屋根には18個の鬼が付けられている。
板金工事の鬼は、先ず広葉樹の硬い木材で原寸大の型をつくり、その表面に銅板を置いて、コツコツと凹凸に叩き出してつくる。鬼の大きさは、取り付ける屋根の場所によって異となり、その大きさの目安は、大棟鬼を10とすると、降棟鬼8、二の鬼7、稚児鬼と妻降棟鬼6である。(引用) 屋根・建築専門用語辞典 『お』
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