菱の門・門番所(内部)特別公開
姫路城の櫓や櫓門、小天守などの一部はこれまでに一度も、
一般公開されていない場所が多く存在すると言われます。
今回特別公開された「菱の門・門番所」もその一つです。
門番所内に食い込む構造になっている石垣の迫力を間近に感じられ、
迫力ある空間、実際に見て感じることができます。
菱の門・門番所(内部)特別公開
菱の門を正面から見ると、脇戸が設けられているのが分かります。
現在は大扉が常に解放されていますが、
当時は殿などの重要人物がお通りになる場合を除いて、
大扉を開けて中に入ることは稀で、この脇戸がもっぱら利用されたと言われます。
大扉が開いていると内部からは脇戸は見ることができませんが、
脇戸から入ってすぐに開けられた小窓で入城者のチェックができるような仕組みになっています。
この小窓の内部が「門番所」と言うわけです。
門番所は菱の門の西側に位置しています。
これまでは上記のように閉ざされた扉が、
2017/03/17までは、特別公開によって開かれています。
丁度、北側から入り、西側に出るという順路設定になっています。
先ほどの脇戸すぐの小窓から門番所の内部を見ると、
大きな梁が交差し、南(左)には石垣が高く積まれているのが見えます。
門番所の内部から見た脇戸側の小窓です。
後述する「パネル」には以下のように書かれています。
現在、この門番所の室内は土間になっていますが、本来の板敷を模して仮設の置床を設置しています。
厳密に床の高さが当時と同じ保証はありませんが、
番所の役人が、門を通過する者を、座った状態でチェックすることができるように、
高床になっていたことが推測できます。
門番所の北側から内部石垣を見ています。
非常に大きな石を使って組まれた壁一面の石垣は迫力があります。
特別公開に伴って、案内のパネルが設置されています。
パネルには以下のように書かれています。
現在、この門番所の室内は土間になっていますが、本来の板敷を模して仮設の置床を設置しています。
また室内南側の壁は石垣になっており、西の丸東辺石垣の北端に当たります。
その石垣が門の建物に組み込まれているということは、本多忠政が西の丸を造成したときに菱の門も現在のかたちになったとみることができます。
先人の残した記録に触れる
門番所内部に入って見ると「ふーん」と通り過ぎてしまいがちですが、
実は滅多に見れないものを見ることができます。
それは修復の記録である銘板です。
銘板は以下の場所に貼られています。
姫路城菱の門修理銘
姫路城菱の門は姫路城二の丸の正門に当り、建立年代は詳かでないが、その形式手法の上から判定すれば桃山期に属するものである。
建立以来安政三年及び明治四十三年の修理を圣て、昭和六年十二月国宝に指定され、現在は法の改正により重要文化財に改められた。
近年建物は軸部の腐朽弛緩によって著しく歪曲傾斜を生じたので、当委員会の直営で昭和二十五年四月解体修理に着手し、同二十七年三月修理を完了した。
施工に際しては建物解体前に精密な実測調査を行い、古材の保存に努め在来の形式をまもり、補足取替材には修理年号を烙印して明らかにした。
調査の結果建立当初は総素木造で中世塗込に改められた痕跡及び番人詰所内部床の床張りであったことが認められたが、修理はいづれも現状のまま行った。
更にこの工事に関連して同門西方及西南方土塀下石垣の積替え並に同土塀の修築を施工した。記
着工 昭和二十五年四月一日
竣工 昭和二十七年三月三十一日工事費
菱の門工事費
金 五百五拾万 六千九百五拾九円 也(5,506,959円)
同門西方及び西南方土塀工事費
金 六拾五万 九千五百貮拾八円 也(659,528円)
同土塀下石垣工事費
金 壱百参拾四万 貮千四拾円 也(1,342,040円)
昭和二十七年三月三十一日 文化財保護委員会
当時の貨幣価値を平成19年頃の価値に換算してみますと、、、
菱の門工事費 5,506,959円 x 7.7 = 42,403,584.3(約4240万)
同門西方及び西南方土塀工事費 659,528円 x 7.7 = 5,078,365.6(約508万)
同土塀下石垣工事費 1,342,040円 x 7.7 = 10,333,708(約1033万)
1.000円(昭和25年)×7.0×1.1=7,700円(平成19年)
※上記「1.000円」は「1,000円」の模様でおよそ、7.7倍
あれ?意外とお安いような・・・気もしなくもないですね(払えませんが)
昭和五十四年度
菱の門 上重北側屋根瓦葺替、屋根瓦目地漆喰全面塗替
(菱の門)東方土塀 屋根瓦一部葺替(東部十二メートル)漆喰壁及び屋根瓦目地漆喰全面塗替昭和五十九年度
菱の門西方土塀 屋根修理(目地漆喰塗替、瓦差替)部分修理(壁及び軒廻漆喰塗替)
こうした修復履歴に関しての記録を直接目にすることは、
普段は到底できず、先人の残した記録をこうして読むことができるのも楽しいものです。
ちなみにこの食い込んだ石垣は、
「内部に食い込んでいるのか、ふーん」となってしまうかもしれませんが、
必然性があって、このような形になっているのです。
菱の門をぐるっと周囲から見てみると、
どうしてここが石垣と一体化しているのかが分かります。
菱の門・門番所(内部)特別公開の神戸新聞記事
菱の門・門番所(内部)特別公開については神戸新聞も以下のように報じています。
兵庫県にある世界文化遺産・国宝姫路城で21日、国の重要文化財「菱(ひし)の門」内部の一般公開が始まった。これまで目に触れることのなかった場所とあって、混雑時には行列ができるほどのにぎわいとなった。
菱の門は入城口を越えて一つ目にある門で、城内に現存する門では最大。公開された西側の1階部分は番人の詰め所で南側が石垣とつながる構造になっている。
(引用)神戸新聞NEXT|姫路|姫路城「菱の門」内部初公開 混雑時には行列も
(記事アーカイブ)https://www.evernote.com/shard/s380/sh/deefea91-bb6d-4c88-8ace-fad1ed0ceeea/ab8782f74b56c03a7b6a2f6ad3951924
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公開日:
最終更新日:2017/02/28